ケアマネ歴12年、介護福祉士歴8年。居宅ケアマネや施設ケアマネを含み、これまで4回の転職を経験。成功した転職もあれば、失敗した転職ありました。そんな転職経験を活かすため当ブログを立ち上げました。ケアマネジャーのお仕事や転職をサポートするセミナーに多数登壇。ケアマネジャー情報雑誌に掲載実績あり。保有資格は、介護支援専門員、社会福祉士、介護福祉士、介護事務、ケアクラーク、他。現在は千葉県内の主任ケアマネジャーとして千葉県内の地域包括支援センターで働いています。
ケアマネ担当件数の上限は?平均は?介護予防支援についても解説
ケアマネジャーの業務では、1人あたり担当できる利用者様の上限数、つまり「担当件数」が決まっています。この担当件数を超えた場合、人員基準違反となり行政指導の対象となる可能性があります。
このページでは、ケアマネジャーの担当件数に関する解説はもちろん、担当件数の計算方法、介護予防支援の場合に関して、基本報酬の逓減性と防止策についても詳しく解説します。
また、ケアマネジャーとして働くみんなの担当件数の平均についてのアンケート結果も公開。ケアマネジャーとして活躍したい人や、現在ケアマネジャーで働き方を見直したいという方はぜひ参考にしてみてください。
目次
ケアマネジャーの担当件数の上限について
ケアマネジャーの担当件数は勤務する施設の形態によって異なるため注意が必要です。以下では、具体的な担当件数について詳しく解説します。
居宅ケアマネの担当件数の上限
居宅介護支援事業所で働く居宅ケアマネの場合、利用者様1人に対して担当件数は通常35人です。特定の決まりではありませんが、担当件数が40人を超えると介護基本報酬が減少する逓減性が導入されていますので、通常は40人未満となるでしょう。
施設ケアマネの担当件数の上限
介護施設で働く施設ケアマネは、通常、利用者様100人に対して最低1人の配置が求められています。施設の規模によって異なりますが、施設全体の利用者様を1人の施設ケアマネが担当するケースも多いようです。
一方、小規模な施設では、担当件数は通常よりも少なくなることがよくあります。ケアマネジャーとして余裕がある場合は、一般的な介護職員や生活相談員などの兼務も行うことがあります。
ケアマネジャーの配置基準はパートや派遣社員も1人として計算
ケアマネジャーの担当件数の配置基準に雇用形態の決まりはありません。正社員でなくても、パートや派遣社員といった非正規雇用でも「ケアマネジャー1人」としてカウントされます。
ただ、ケアマネの配置基準でよくあるのが、ギリギリの配置基準で運営していた居宅介護支援事業所で正社員のケアマネジャーが退職、事業所が抱える担当件数と在籍するケアマネの計算が合わなくなる、このままでは行政指導、回避するためにパートや派遣でケアマネを急遽補填、補填したはいいが当然即戦力ではない、実働は残された正社員ケアマネの担当件数に振り分けられて単に負担が増えた、という事例。
グレーなやり方ですが、ケアマネの担当件数あるあるです笑
ケアマネジャーの担当件数の計算方法
ケアマネジャーの担当件数の計算方法は、利用者総数(要支援者の場合は2分の1を掛けた数)を、常勤換算方法で算出したケアマネジャーの人数で割った数となります。要介護の利用者様は「1名」として数え、要支援の利用者様は「0.5名」として数えることに注意してください。
例)要介護30人+6人(要支援12人)=36人
また、担当件数は事業所ごとに考え、担当件数の総数を事業所に配置されたケアマネの常勤換算人数で割り、40未満は居宅介護支援費Ⅰを、40以上60未満は40を超え60を超えない件数分を居宅介護支援費Ⅱを、60を超える分を居宅介護支援費Ⅲを算定することとなります。
介護予防支援の場合は20件未満にする
居宅ケアマネの標準的な担当件数は、利用者35人に対して1人の割り当てが定められています。介護保険施設での常勤は認められていませんが、他の仕事との兼務は可能です。
ただし、介護報酬における担当件数の基準はケアマネジャー1人あたり40件未満となります。そのため、介護予防支援の場合は20件未満となります。一部のケースでは担当件数を超えることもありますが、あまりにもケアマネジャーの業務に支障をきたすほどの負荷がかかると、行政からの指導が入る可能性がありますので注意が必要です。
担当件数の上限を超えた場合はどうなる?
居宅介護支援事業所では、ケアマネジャー1人あたりの担当件数は35人とされていますが、仮に35人を超えても行政指導は行われません。
後ほど詳しく説明しますが、担当件数が40人以上となると40人以降は介護基本報酬が逓減性(報酬が半額など)が適応されます。それ以前に、1人のケアマネジャーが40人以上を担当することは経験上不可能です。
つまり、担当件数の上限を超えた場合、「配置基準違反ではなく労働基準法違反で行政指導が行われる可能性がある」が、正しい認識と言えるでしょう。
ケアマネ担当件数に関する逓減性について
居宅介護支援事業所における基本報酬の逓減性(逓減制度)は、ケアマネジャー1人あたりの担当件数が40名を超えると、40名以上の利用者に対して基本報酬が削減されるという介護報酬の仕組みです。
なお、2021年度の介護報酬改定では、ICTの活用や事務職員の配置を行っている事業所に限り、減額される件数の基準が「40名以上」から「45名以上」となる新たなルールが導入されました。
「担当件数が増えると負担が増えるのでは?」と心配されるかもしれませんが、この見直しは業務の効率化が図られている事業所に適用されるものですので、ケアマネジャーの負担が極端に増えるという懸念はないでしょう。
また、担当件数が増えても介護報酬は減算されないため、ケアマネジャーの処遇についても見直しが行われる予定です。
参照ページ
逓減性による介護報酬の減額を受けないための対策
居宅介護支援事業所において、逓減性の適用による減額を回避するためには、「ICTの導入」または「事務員の追加配置」という対策が必要になります。
ICTを導入する
ICTの導入には、以下のような機器や設備の導入があります。
- スマートフォン:事業所内外や利用者との情報共有が可能なチャットアプリが搭載されたスマホ
- タブレット:訪問記録を随時記載できる機能(音声入力も可能)のソフトウェアが組み込まれたタブレット
事務員を追加配置する
事務員の配置には、以下の条件が定められています。
- 介護支援専門員の業務の負担軽減や効率化を促すために、職員を配置すること
- 事務員の勤務形態は常勤でなくても構わない(パートや派遣でもOK)
- 居宅介護支援事業所内だけでなく、同一法人内でも事務員を配置できる
- 事務員は、介護支援専門員1人あたり1か月に24時間以上の勤務が必要とされています
ケアマネ担当件数の平均値は30.5件
厚生労働省が実施した「令和2年度介護事業経営実態調査」によると、介護支援専門員(常勤換算)1人当たりの実利用者数は「36.3件」と報告されています。
では、実際のところケアマネジャーとして働く皆さんは、一体どれだけの担当件数を抱えているのでしょうか?「ケアマネ転職の教科書」では現役ケアマネジャー200名(居宅や施設はランダム)を対象にアンケートを行ってみました。
担当件数 | 回答数 |
---|---|
10件以下 | 6名(3%) |
11~20件 | 12名(6%) |
21~30件 | 62名(31%) |
31~35件 | 68名(34%) |
36件以上 | 52名(26%) |
アンケートを元に計算したケアマネ担当件数の平均値は「30.5件」という結果になりました。居宅ケアマネ、施設ケアマネ問わずランダムでアンケートを行ったため厚生労働省が提示した数値と若干のズレがありますね。
居宅ケアマネと施設ケアマネの仕事内容の違いは?
居宅介護支援事業所で働く「居宅ケアマネ」と介護施設で働く「施設ケアマネ」は、同じ資格を持っていますが、それぞれの仕事内容には違いがあります。
以下では、両者の仕事内容の具体的な違いについて解説しますので、各ケアマネジャーの業務に興味がある方は参考にしてみてください。
居宅ケアマネの仕事内容
居宅ケアマネジャーは、利用者様やその家族に寄り添いながらケアプランの作成を行います。居宅ケアマネジャーが作成するケアプランは、利用者様が自宅で自立した生活を送ることを目指したものです。
また、ケアプランに基づいてサービスが開始された後も、ケアマネジャーは定期的に利用者様の自宅を訪問し、ケアプランが適切であるかを確認します。
居宅ケアマネは個々の状況に応じて自己判断が求められる
施設ケアマネージャーとは異なり、居宅ケアマネージャーは個々の状況に応じて自己判断が求められる仕事です。居宅ケアマネージャーは、居宅ケアプランの作成や利用者様の自宅訪問に加えて、利用者様それぞれに最適なデイサービスや介護施設の選択も行います。業務の遂行中には予期せぬ状況にも対処する必要があり、その際には個人の裁量が多く必要とされます。
施設ケアマネの仕事内容
施設ケアマネージャーが作成するケアプランは、利用者様が施設内で快適に過ごすことを目指しています。そのため、施設ケアマネージャーは施設の方針に則ってケアプランを立案します。
施設ケアマネージャーは利用者様の状態を確認しながら、施設内のサービスと組み合わせたプランを作成しますが、担当する利用者様の数は多く、約100名にも及ぶため、膨大な量のケアプラン作成を担当しなければなりません。
施設形態ごとに仕事内容は少し異なる
施設ケアマネージャーの仕事内容は、勤務する施設形態によって異なることがあります。特別養護老人ホーム、グループホーム、デイサービスなど、施設の種類は多岐に渡ります。施設の形態によって利用者様の介護度や状態も異なるため、作成するケアプランの内容も変化することになります。
居宅ケアマネと施設ケアマネの働き方の違いは?
居宅ケアマネージャーと施設ケアマネージャーでは、働き方や仕事の目的に違いがあります。また、勤務する場所も異なります。居宅ケアマネージャーは利用者の自宅を定期的に訪問する必要があります。
一方、施設ケアマネージャーは施設内で利用者と関わります。施設ケアマネージャーは介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、グループホーム、介護付き有料老人ホームなどの施設で勤務します。
居宅ケアマネは利用者様の自宅へ訪問する
居宅ケアマネージャーは、居宅介護支援事業所に所属しています。利用者様の自宅への訪問が業務の一環となります。利用者様の自宅での介護をサポートするために、利用者様の環境や身体状況に応じたケアプランを作成します。
ケアプランの作成においては、利用者様が快適に過ごせるように配慮すると同時に、利用者様自身が自分で行えることを増やすことも考慮されます。事務作業は主に事業所内で行われますが、利用者様の自宅への訪問も頻繁に行うため、移動が多い職種です。
施設ケアマネはスケジュールに沿って勤務する
施設ケアマネージャーは、基本的には施設のスケジュールに従って業務を行います。ただし、担当件数が多い場合は利用者ごとのケアプランを作成する際に多くの時間を要する可能性があります。
また、一部の施設ではケアマネージャーが介護職と兼任し、24時間稼働している場合は夜勤にも参加することがあります。いずれにしても、自身でスケジュールを管理する能力が重要となります。
ケアマネジャーの平均給与はいくら?
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、常勤の月給制を採用しているケアマネジャー全体の平均給与は36万8,030円です。前年度(平成31年)と比較すると、給与は1万6,540円増加しています。
ただし、ケアマネジャーの給与だけでなく、介護職員の給与も勤務する施設の形態によって異なります。以下に、施設形態別のケアマネジャーの平均給与をまとめました。
施設形態 | 平均給与 |
---|---|
介護老人福祉施設 | 41万230円 |
介護老人保健施設 | 38万4,260円 |
介護医療院 | 36万8,870円 |
訪問介護事業所 | 33万3,480円 |
通所介護事業所 | 31万7,190円 |
通所リハビリテーション事業所 | 36万3,640円 |
特定施設入居者生活介護事業所 | 37万210円 |
小規模多機能型居宅介護事業所 | 34万7,810円 |
認知症対応型共同生活介護事業所 | 35万3,730円 |
デイサービスでは主に日勤勤務が中心となり、一方で利用者の介護度が高い特別養護老人ホームと比較すると、約7万円もの給与差が存在することが明らかになりました。自身のワークライフバランスや給与など、重視したい要素に基づいて施設を選ぶことが重要です。
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ケアマネの担当件数に関するよくある質問
最後に、ケアマネの担当件数に関するよくある質問をまとめてみました。
- ケアマネ担当件数の上限は?
-
居宅介護支援事業所で働くケアマネージャー1人あたりの担当件数の上限は、利用者35人に対して1人とされています。ただし、35人以上の担当が禁じられているわけではありません。担当件数が40件を超えると、介護基本報酬が減少する遁減性が導入されます。そのため、現実的に担当できるのは39人までとされています。
- ケアマネ担当件数の平均は?
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ケアマネジャーの平均担当件数は、厚生労働省介護事業経営概況調査によると、常勤換算で約36.3人です。当サイトが独自に行った調査によると、ケアマネジャーの担当件数の平均は「30.5件」となりました。
- ケアマネ担当件数の計算方法は?
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介護報酬の請求における担当件数の計算方法は、要介護の利用者様は「1名」として数えられ、要支援の利用者様は「0.5名」として数えられます。
- ケアマネ担当件数における逓減性って?
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逓減性(逓減制度)とは、ケアマネジャー1人当たりの利用者担当件数が一定数を超えたとき、基本報酬を引き下げる仕組みです。ケアマネジャーの担当件数が40件以上になると、40名以上の利用者様について基本報酬が低くなります。
担当件数は自らのキャパシティ内に抑える
ケアマネジャーの担当件数は、居宅ケアマネの場合だと上限が35件、施設ケアマネの場合だと上限が利用者様100人に対して最低1人の配置が求められています。配置基準を超えた場合、介護報酬が減額されるため、担当件数が多ければ良いというわけではありません。
それよりも、利用者様やそのご家族の希望を考慮しつつ自宅で自立した生活が送れるようにサポートするのがケアマネジャーの仕事。利用者様ひとり一人としっかり向き合うためにも、無理に担当件数を増やすことはおすすめしません。
もし、上司に担当件数を増やすように強いられた場合は、自らのキャパシティを十分に考慮して、無理そうな場合ははっきりと断りましょう。それが厳しいのであれば転職も考えると良いでしょう。決して自分を犠牲しないでください。あなたは使い捨ての駒じゃありません。選択する事由があります。
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